うつ病者への支援 | ご家族へのご提案

 うつ病に対して,家族が協力的な場合,比較的短期間でうつ病は良くなっていきます。
 ある会社の経営者は,過酷な労働から,うつ病になってしまいました。彼は,丸々1年休職したのですが,一年ですっかり良くなりました。その背景には,家族の役割が一番大きかったと思います。
 その人の奥さんは,うつ病の本を読み,どうやったら家族が協力できるかよく勉強をしていました。
 「朝が辛い」けれど,必ず奥さんは,旦那さんを朝起こし,朝ご飯を食べさせて,子供を送り出し,自分も仕事をしていました。旦那さんの方は奥さんがいない間,出来る家事をやったり,おっくうだと思いながらも近くの公園に散歩に行ったり,気が向けば釣りに出かけていました。釣りに行くというのは非常に効果的な作業療法だと思います。海まで行って,帰ってくるまですべていろんな感情を体験するでしょう。
 仕事だけしか頭になかったこの男性は,他の趣味を持つことで人生に彩りを持つことが出来ました。多分,苦しい時彼は,海に行って大自然に触れ,釣りをして気晴らしをするでしょう。
 また,彼は従業員の健康についての気配りをするようになりました。
 こんなふうな美談は,なかなかないかも知れません。
 しかし,病気によって人間に対する優しいまなざしが送れることができるようになったことは,病気は無駄ではなかったという事の一つの証明ではないでしょうか。

社会的資源を使いまくる

 家族が協力的であれば,うまく行くのですが,そういうわけではない人の方が多いのではないでしょうか。
 最初のうちは,「病気なのだから」といろいろ気を遣ってくれるでしょうが,長患いとなると家族も疲れはててしまい,やってはいけない事であると知りながらも,患者さんを責めたり,患者さんが安心して休めない状況に追い込んでしまうことは,実際多いのです。
 特に精神疾患は,ご近所の人にも話しにくいことです。いくらうつ病が「誰にも起こる病気」という市民権を得たとはいえ,偏見は相変わらず付いて回っています。

 介護する側の家族が参ってしまう・・・
 社会的な資源を出来る限り使う事が大切だと思います。生協ではとても安い家事代行のサービスがあります。また,無料の電話相談などをうまく利用する。どんな病気でも介護にはストレスはつきものですから,話をする方がいいです。
 また,カウンセラーや看護師などに話しを訊いてもらうことも有効です。

「頑張らない」接し方

 「家族がどう接したらよいのか」については,いろんな本が出ていますから,みなさんもご存知でしょう。
 患者さんに,「頑張れ」とは言わないは一般に知れ渡っていますね。
 しかし,家族に対して同様なのです。「頑張りすぎない」事が一番大切です。
 「頑張りすぎる」と結局はろくなことにならないのです。
 段々否定的な感情や思考が起こり,介護によるうつが起こります。こうなったら結局悪循環になってしまいます。
 ですから,「あっ,やばそう」と思った段階で,「限界設定」してしまいましょう。すなわち,「これ以上は無理」と線引きをするのです。
 余裕がないときには,キレそうになる前にこんな言葉をかけたら,どうでしょうか。
 「私は,あなたと一緒に病気と闘っています。しかし,今はあなたの話を聞ける状態ではない。後で余裕が出来たら聴けると思う。だから今は私に充電する時間を下さい。」
 この言い方は,相手にとってもあなたにとっても中立的な言い方です。自分も他人もを責めるのではなく,客観的観察的な言い方なので傷つける事はないでしょう。
 なお,このように,「共に戦っている」という説明を加えれば,相手に対して「無関心ではない」ということ示すことができます。
 そして,相手も自分も辛い精神状態があり,相手も辛い精神状態になっている,ということであれば互いに対立することは避けられるでしょう。
 どんな病気でも,見捨てられる不安を抱えやすいものですが,うつの人は病気なのに人格の問題という捉え方をしがちです。相手が自分に嫌気がさしたのは,自分の性格のせいだ,と自分に非を着せがちです。
 しかし,相手の人格の問題では無い,ということを強調した上で,一般的に,「どんな病気でも介護するのは骨の折れること」であり,「もしあなたが,介護側に回れば,私と同じような疲れを感じるものだ」ということ話してみてはどうでしょうか。
 そもそもキレそうになる前には,人は殆ど何らかの形で距離をおきますよね。
 例えば,育児で子供にブチキレそうなとき,母親は子供から距離を取りますね。
 これとおなじくクールダウンする時間はどちらも大切なのです。