うつ病への心理療法 | 弁証法的行動療法・マインドフルネス認知療法

 「ネガティブ思考に焦点を合わせてそれをチェックする」宿題を課す従来型認知行動療法に対して、ネガティブ思考をも否定せず、あるがままに眺めるという瞑想を取り入れたアプローチが新しい潮流として注目を集めています。

「俺はダメ人間」思考と戦わないアプローチ-思考・感情は移り行くものだ

 弁証法的行動療法とは,認知療法に禅の考え方や,人間性心理学の技法をとりいれたものだと考えていいと思います。あるいはアメリカ型森田療法だとも言えるかも知れません。
 治療者は「全ての問題は努力すれば解決する」という幻想を捨てるように指導します。
 要は,あるがままにどんな感情も思考も受け入れましょう。どんなに惨めな気持ちでもそれを受容して,それでもやるべき事はやりましょう。
 弁証法的行動療法の本格的なプログラムは瞑想だらけなんです。ネガティブな気持ちも移りゆくものでしかない。それを徹底的にたたきこむために瞑想する。あらゆる感覚(身体感覚も)を感じて,すべての感覚や感情と仲良く付き合うのがモットーです。
 ですから,「緊張して話せない」ではなくて,「緊張してもいいから話しましょう。」となるわけです。認知行動療法ではまずネガティブな思考に焦点を当てますが,それをしません。緊張と話したいを両立させてしまいます。
 だから「緊張している。しかしみんなの前で話そう」と言い換えます。これはもはやゲシュタルト療法とそっくりです。

 ここで皆さんもこの真似をしてみましょう。たとえば,雨の日に買い物に出るのはおっくうです。しかし,どうしても足りない物があるとしましょう。このおっくうさと買い物を両立させて,「おくっうだ。しかし買い物にいくぞう」と言い直すとどう違いが起こりますか。
 すくなくとも,「しかし」の後の方が強調されるでしょう。こんな工夫も生活の中に取り入れてみてはどうでしょう。

ネガティブな思考とは,戦わない-コントロールこそが問題である-

 重視されるのは「思考や感情,身体感覚にたいする気づきや関係性の変化」です。
 だから技法にはこんなのがあります。「俺はダメだ」を1-2分間早口で繰り返して言います。そうすると「俺はダメだ」は段々とただの音でしかなくなる。ネガティブな思考を逆にたくさんやらせてそれに対して,耐性をつけ,そんな声がしても雑音として受け流すようにトレーニングします。

 この技法は,実存主義派のフランクルの逆説療法と似ています。どもりの人に,「思いっきりどもりながら,話してみなさい」と指導します。どもれどもれと思いながら話すと逆にどもれなくなりますね。

 なお,弁証法的行動療法の中では,価値を重視します。それは体験的にです。
 こんな質問をします。「あなたは自分の人生をどんなものであると言いたいですか」
 例えば,「どんな葬儀をしたいのか,葬儀でどんな音楽を流したいのか,周りの人達はどんな反応をするのか等想像してみて下さい。」また「自分が死ぬときどんな手紙を書き残したいですか?」などです。
 なお,自分が死んで生まれ変わるというイメージ技法もあります(サイモントンのイメージ法)。この方法を使うと自分が何を大切にしていきたいのかを体験的にしることが出来ます。